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自治体担当者のしょーじきなとこ (仮)|真鶴町 卜部氏|官民連携ネットワークを駆使した地域づくり

  • 2019/12/12

あわえインタビュー「自治体担当者のしょーじきなとこ(仮)」Vol. 2

官民連携ネットワークを駆使したサテライトオフィス誘致から連鎖が起きる地域づくり

事前調査・分析をもとに意味のあるKPIを設定する、「真鶴町の生活を豊かにする」の実現を徹底的に追及する、町全体で関わる官民連携の取り組みがどのように真鶴町の地域づくりに貢献しているかなど、真鶴町のサテライトオフィス誘致をとりまくチャレンジの現場を担当の卜部氏にお伺いし、取り組みの秘訣を一緒に掘りさげてみました。

神奈川県真鶴町 政策課 戦略推進係長 卜部 直也 氏 (真鶴町 公式HP
インタビュアー : 株式会社あわえ 事業開発部 広域事業責任者 ローカル・インテグレーター 吉田 和史


調査・分析に基づく目標設定

吉田和史:真鶴町のサテライトオフィス誘致の経緯をご説明いただけますか?
卜部 直也 氏:2016年8月に出会ったあわえの吉田社長の講演会をきっかけに、真鶴町の地方創生として新たな機軸を立ち上げなければならない背景もあり、移住促進施策の手法としてサテライトオフィス誘致が有効ではと考えました。

真鶴町の新たな機軸の立ち上げは、サテライトオフィス誘致開始を決める以前から卜部さんのミッションとしてお持ちだったのでしょうか?

真鶴町人口ビジョン・総合戦略」策定で分析を行った結果、生産年齢人口を増やしていかなければならないことがわかっていました。その対策として働き手としての現役世代の移住を促進するために、新たにサテライトオフィス開設企業の誘致が有効だという判断になったのです。

卜部さんは移住施策としてのサテライトオフィス誘致の関係性についてすでにご存じでしたが、真鶴町内部の皆さんにサテライトオフィス誘致施策をどのように説明され、誘致の事業化における課題をどのように解決されたのでしょうか?

いきなりサテライトオフィス誘致をやります、という提案であったなら真鶴庁内で合意を得られなかったと思います。
大事だったのは、まずは町にサテライトオフィス誘致が可能なのかを調査することから始めたことです。具体的に何をしていいかわからなかったので、あわえさんの力を借りながら、現状分析をして、教育、トレーニングを受け、誘致ステップとして必要な作業を徹底的に勉強できたのが大きかったです。

サテライトオフィス誘致と言えば、徳島県の神山町、美波町が有名ですが、一般的なイメージとして、例えば「全域にWi-Fi整備をしなければない」という認識がありましたが、勉強を経て、誘致する地区ないしは物件・施設にWi-Fiが整備されていれば問題ないということがわかりましたし、調査によって今すでに、真鶴には誘致に活用できる資源や物件があり、人材もいることが確認できました。

物件については、真鶴町にすでにあるコミュニティセンターや、創作拠点施設として稼働していた真鶴テックラボがコワーキングスペースとしてそのまま活用できるとわかりました。また、真鶴町の町役場や職員以外にも商工会や民間企業に一緒に取り組んでくれる町民がいることの確認ができたのが大きかったですね。

まず調査をしたことの影響は大きかったと思います。
調査することによって多額の投資を準備しなくてもサテライトオフィス誘致はできるということを、卜部さんに町を案内いただきながら見つけていけましたね。

はい、調査は誘致担当者本人にとってもよかったです。誘致の取り組み開始から半年以内に、真鶴町で具現化する可能性やアプローチが自分自身で確認できたのがよかったです。議会からも質問や説明が求められる中で、実現できる具体的な内容の説明ができるようになったのはよかったですね。

積極的な意味のあるKPIとは?

真鶴町は、サテライトオフィス誘致に関する調査を実施したりと、戦略を立てられてからすでに4年くらい取り組まれています。最初の2年間ほどはなかなか成果が出ず、準備に専念した期間であったようですが、その期間をどのように切り抜けてこられましたか?

KPI自体がよかったのだと思います。真鶴町では無理な目標設定をしませんでした。1年に1社誘致という目標値に積極的な「意味合い」を持たせました。
意識したことは「数字」そのものを追いかけないこと。真鶴町ときちんと共生できるサテライトオフィス進出企業を誘致するという考えに基づいて1社という目標を設定し、町議会へもそのように説明しました。
そのため、焦らずじっくりと進出企業を選ぶことができたと思っています。

1年に1社の企業誘致は少ないのではないか、という意見はありませんでしたか?

真鶴町はこれまで、一般に言われている企業誘致、たとえば工場誘致などの従来型の企業誘致は平地がほんどない地形条件等からも、行なったことがなかったので実績もなく、そうした意味でも妥当な目標値だったと思います。なによりその数値に積極的な理由を持たせたのが大きいですね。

確かにそうですね!真鶴町にとって合う企業をしっかりと見極め、その観点を意識して誘致していくことが大切ですね。1年目に3社、5社を誘致することを目標にされているケースはよくあるのですが、各自治体の状況や目的に合わせ、積極的な意味合いを持たせた現実的な数字に目標を落とし込むことがとても大事ですよね。

はい、大事ですね!
もし真鶴町で1年目の誘致目標を5社に設定していたとしたら、ある意味不幸な結果を招いていたと思います。誘致する側として「焦る」ことにもなったでしょうし、1年に5社という数値は達成が難しい高い目標であるため、1年後にそれを達成できなかった場合、このサテライトオフィス誘致プロジェクト自体が無くなってしまう可能性もあったのです。
その意味でも、「1社」という現実的な数字を設定し、その数字にちゃんと意味合いをもたせるようにしました。

特に真鶴町の場合、事前の調査結果から、住民の真鶴町が好きな理由、つまり居住満足要因として、コミュニティの豊かさや家族や友達がたくさんいるという点が把握できていました。その魅力を壊してまで外部の人をどんどん呼び込むことは、やってはならないことだと思っていました。だからこそ「地域コミュニティと共生できる」という誘致企業の大前提を打ち立て、目標設定をしたことで皆さんに納得していただけたのではないかと思います。

1年に1社誘致という目標は低いとのイメージを持たれている方もいらっしゃると思いますが、卜部さんがなさったように、数値に積極的な意味合いを持たせている点、また、 コミュニティが素晴らしいので真鶴に住んでいるという現状を損なわないという点を、うまく活用することで、「1社誘致」という数字に意味を持たせることができますね。
関係者が納得できることや、適当に数字を設定しないことなどを意識して、しっかりと考えて戦略を練り上げることが重要ですね。

はい。確かに、事前の調査過程で数値目標を追っている事例も見られました。
数を追うと、プロジェクトそのものの信頼性が崩れる恐れがあります。例えば、誘致件数が目的化してしまい、実態がないのにサテライトオフィスとして認定したりすると、その時点でプロジェクトはおしまいだと思うのです。信頼性、プロジェクトの「品質」を損なわないことが大切だと思います。

真の官民連携コミュニティと認定制度

コミュニティ形成の視点で、自治体同士の協議会は珍しくないのですが、真鶴町には官民連携の協議会「真鶴町サテライトオフィス誘致運営協議会」があります。真鶴町のように町の皆さんが積極的に協議会に関わられるようになった経緯、そして協議会の効果も教えていただけますか?

官民連携の協議会の効果は大きいと思います。
そもそも、真鶴町で本格的にサテライトオフィス誘致を始める前に、「行政のみで行うまちづくり」の時代は終わり、少ない予算、少ない人的資源でまちづくりを行い、民間の力でまちを育てていく、行政はそれを応援していくという段階に入っていました。
サテライトオフィス誘致開始前、特に2014年以降、真鶴町では朝市や芸術祭、起業プログラムの実施等、様々な町民事業によるプロジェクトが立ち上がり、地域課題解決事業が芽吹いていました。その中ですでにサテライトオフィス誘致事業が行われていて、行政だけが勝手に企業を誘致するのではなく、官民連携が当たり前のようにできている状態から誘致をスタートすることができました。

また、あわえさんと行った地域プレイヤーや人的資源に関する調査分析によって、サテライトオフィス誘致業務すべてを行政だけで担うことはできないことがはっきりしていました。たとえば広報やプロモーションが行える民間団体や、地元企業の紹介や地元のキーパーソンとのネットワーク作りの場を提供するといったサテライトオフィス進出企業を町内へ受け入れるためにサポートいただける地元の商工会・観光協会などの既存団体の協力が確認できていたので、ごく自然な流れの中で官民連携組織を作ることができました。

真鶴町サテライトオフィス認定制度」についても教えていただけますか?
真鶴町は進出される企業に対して過度の期待がないですよね。真鶴に来てまちを変えてください、活性化してくださいというスタンスではなく、「真鶴町はこんな暮らしやすいまちだから、”営み”や”美の基準”に一緒にまざりませんか?」といった「私たちの中に入っておいでよ」というスタンスが感じられます。企業が真鶴町に来られた段階で、地域課題を一緒になって解決していきたいという意思を強く感じます。


真鶴町は行政自体の資源が小さい町で、資源も予算も十分にあるわけではありません。また現在、補助金による移住推進やサテライトオフィス誘致は行わない方針で、進出企業を徹底的にサポートする「地域の受け入れ・伴走」に注力して取り組んでいます。「地元受け入れ」が企業にとってのメリットになるよう尽力しています。
真鶴町には「コミュニティの豊かさ」という強みがあり、これを生かす形でサテライトオフィス誘致を目的とした官民連携組織を作ったことは大きな意義があったと思います。
その意味でも、地元受け入れの支援策でもあるサテライトオフィス認定に関して行政だけで判断しないようにしています。当事者である町民の皆さんや民間団体の方々が「良い」と判断することが重要です。

誰のための認定制度かを意識

「誘致目標1社」という「積極的な意味合いを持つ数字目標の達成」を実現するために、自然と官民で連携されているのですね。

そうです。地域との共生を判断するための認定制度なので、官民連携組織で判断し、意見を提言する仕組みになっています。それが大事だと思います。

真鶴町サテライトオフィス認定制度の審査が「真鶴町サテライトオフィス誘致運営協議会」主導であることと同様に、経済面でも行政からの補助金や助成金が一切絡まない点がかなりユニークですよね。

補助金/助成金が関わると、結局補助金目当てで来られる企業が多くなってしまうところがあります。補助金の交付終了のタイミングでの企業撤退が見受けられるので、そのような企業は始めからご遠慮いただきたいという気持ちがあります。
真鶴町は小さな町なので、ご自身で資金調達して真鶴に進出したいという企業を見つける方が、長い目で見れば地域と進出企業、双方にとってのメリットであり、それが持続可能な取り組みにつながるのではないかと思います。
また、お金をかけないでサテライトオフィス誘致を行うことは限りある予算の中で行政内部に対して説得力がありますし、町民に対する行政の姿勢としてもきちんと伝えていいことだと思います。

サテライトオフィス誘致は、工場誘致に比較するとコストがかからないと思います。地域をくまなく見渡し、企業向けの物件や事業者がすでにいることがわかれば、本来お金はかからないはずだとわかりますよね。

そうですね。企業と一緒に有効な物件を探す段階では、行政の「地元力」が問われます。行政だけで誘致を行う場合は資源が限られていて物件を提供できない場合でも、地元とのつながりや、様々な立場の町民が参加する協議会を通じ、個人や会社のルートを活用して物件を掘り起こすことができます。一例として、地元民間ルートによる協力でサテライトオフィスを開設した企業が一度に4棟もの空き家を開拓できたという事例もあり、地元の連携組織ネットワークだからこそ実現できることだと思っていますね。

ターゲット企業像を徹底追及

真鶴町では、「ターゲット企業」を明確に設定されていて、そのターゲット像に合致する企業と去年は2社、今年は3社とマッチングされたとのことですが、マッチングイベントに出展すると様々な企業との出会いがあり、その度に、この企業はいいかもしれないと感じられることもあるかと思います。それでも真鶴町は、「こういう企業と一緒にやるんだ」というターゲット企業像追及のスタンスを貫かれて、結果的にそのターゲット像と合致する企業が実際に真鶴町に進出されています。卜部さんや協議会の方は、すぐにサテライトオフィス進出までいかなくても、ターゲット像に合致する企業であれば、サテライトオフィス誘致をする以前から繋がっている方や、マッチングイベント後に改めて繋がった方とのご縁などを大切にされつつ、ターゲット企業像を追及されていますよね。

何のためにサテライトオフィス誘致を行うかというと、真鶴での生活が楽しく豊かになることです。その観点が明確であればあるほど、そのゴールに向けて直面する課題に関してビジネスの可能性を感じたり、課題を解決してくれる仲間が見えてきたり、増えていったりという感じです。
地域の課題設定をどうするかが誘致プロジェクトの大事な作業です。これはまさにあわえさんから学んだことなんです(笑)

調査結果からも、真鶴町は住民の生活が豊かになることを根本的に大切にしていることがわかっています。企業に進出してもらうために企業に補助金を用意したり華美な建物を建てたりする方策とはまったく違うと感じます。真鶴町があくまでも町民の視点に立って、真鶴の人たちの生活を良くするために協議会で企業を吟味することや、誘致に助成金を使わないことが取り組みのすべてと繋がっていますね。

その点を追求しています。真鶴町に来てくださった企業で、地域情報を発信するWebサービスを開発している企業があります。普通のWebサイト運営企業だと町からの委託費を見込んで進出されてこられますが、その企業はそうではなく、自分たちの事業として、ローカル情報を参加型で発信するサービスを自分たちの資金で開発したいとおっしゃって、真鶴町に進出していただいています。
そんな課題解決方法があるんだなと教えられました。そういう良い流れが生まれてきていると思います。

その企業は当初真鶴町のターゲット像ではなかったと思いますが、受け入れていらっしゃいます。地域課題を企業に見せることによって良い成果になった例ですね。
地域課題の解決のためにサテライトオフィス企業を誘致することに対して、本当に企業が来るのか、また、企業が来てくれると課題をどう解決するのかとの疑問を持たれている自治体もいらっしゃいます。卜部さんならその疑問に対してどう答えられますか?

地域課題の解決とサテライトオフィス誘致は確実にリンクしています。課題解決につながると、実際にやってみて実感しています。
真鶴町は誘致に際して具体的な3つの課題解決に沿ったターゲット企業像を掲げています。
1.女性がワクワク働ける環境を提供できる企業
2.地場産業を高度化、活性化できる企業
3.美の基準を活かしたまちづくりができる企業(空き家を価値化するなど)
この3つを訴求することによって、地域課題を解決できる企業に来てほしいというトップメッセージを発信しています。これらの分野で真鶴町での生活が豊かにできる提案が必要だと伝えています。リゾートを楽しめる企業さんお越しくださいとは一言も言っていないので、そういう企業は来られません。
真鶴町の課題を解決し、町の生活を豊かにすれば、町は受け入れてくれるんだときちんと企業側に伝わっているため、これら3つの課題以外でも、こういうことで真鶴の課題を解決できますよと、企業からご提案いただくことができます。

さきほど触れたWebサービス運営企業の進出によって、例えば、マップといえば今まで真鶴町には紙媒体の地図しかなかった固定的な情報発信だったのが臨機応変な発信の形が生まれと、しかも公衆トイレ情報や、防災関連(消火器の位置情報など)、さらには子育てママが推薦する場所など、重要だけれど非常にディープな地元情報を当事者(住民や観光客等)が発信できるサイトができあがったのです。今まで真鶴町になかったサービスなので、真鶴の生活が面白くなっていきます。

コラボレーションで生活が豊かになる連鎖

おもしろい現象としては、進出くださった企業同士がコラボレーションする現象が起こっています。
例えば、都市部から地方へ人材を送り出す企業が真鶴に来てくれています。都市部の人を真鶴に連れてきていただき、地方暮らし体験をしてもらいます。その後その人々はそのまま真鶴に住む可能性もありますし、他の地方に行ったりされます。その体験者の方が真鶴に滞在する拠点を整備・運営していくためにサテライトオフィスを開設してくれました。その企業が先ほどのWebサービス運営企業と組んで、真鶴に滞在する体験者が真鶴のどこに行けばいいかわからない場合に行くべき場所を見つけられるようWebサービスのサイトを活用することで連携関係を構築しています。
このように、真鶴町に進出した企業同士のビジネスマッチングが生まれているのは面白いです。町民の生活だけではなく、真鶴に来られる観光客や、会社同士の関係も豊かになっています。面白いですよね。

町民の生活を豊かにするためのWebサービスが、観光で真鶴に来られた方の体験を豊かにして、関係人口やサテライトオフィス企業も豊かになっています。豊かになっていく連鎖が起きていますね。

はい、特にマップ情報は真鶴にとって弱かった点だったので、かなり生活が豊かになりました。

一見してターゲット像ではない企業は除外してしまいがちですよね。今すでにある既存サービスの上に真鶴の情報を載せますよというお話しだと、ターゲット企業じゃないように見えたり、売り込みに感じたりしますよね。卜部さんはそういうご提案をどう感じられましたか?その後どのようなアプローチをして誘致を実現されたのでしょうか?

ストレートに企業に訊きます。真鶴町はお金ないので、委託金出さないですよと(笑) それでもどうやって事業を展開されますかと訊きます。そうすると企業が自社事業として自社で資金調達し、自社で開発して展開すると回答してくださった企業については信頼しスタートがきれるので、協議を進めていきました。もしそこで委託費前提ですと言われていたら、やんわりとお断りするところでした。

企業もビジネスで来られていて自治体側も使命があるので、変にジャブを打ち合うのではなく正直ベースでストレートを打ち合うのが大事ですよね。

可能性を見つけ合うのがマッチングイベント

それも大事ですが、ただWin‐Winの関係が必要なので、町はお金ださないですよと言うだけではなく、ではお金を出さない代わりに町ができることはこれですとお伝えします。いろんな人が参加して投稿できる情報発信Webサイトを作りたいという企業がいれば、投稿できる地域人材や場所・素材を真鶴町で一緒に見つけますよと提案するなどです。
また、行政情報を発信したい場合であれば、この情報だったら出せるので、情報を整理しましょう、などと真鶴町として提供可能なことも併せて企業に伝えていきます。そうしないと真鶴に行こうと思わないと思うので!

めちゃくちゃ面白いですね!もともと、たとえ企業が売り込みをしにマッチングイベントに来られていたとしても、お金以上の価値として地域情報を提供したり、地域の人と繋げたりすること、地域が伴走して提供できるものがお金以上の価値があるということを説明することが卜部さんのお仕事で非常に重要ですよね。あとは、その取り組みを新規事業の土台として位置づけてもらうため、しっかりお話をして説得されているところ。
他の自治体の方で、売り込みばかりだったと何のアプローチもしないケースがあるのですが、もったいないですよね。

そうです、もったいないです。サテライトオフィス誘致では、何が起こるかわからないのと、第一判断ではわからない部分はありますよね。
そういう意味でいうと、また先ほどのお話と繋がるんですが、官民連携組織を作っていたのがとてもよかったです。やはり自分たちだけではわからないケースがあるので、複数の分野の仲間と一緒に推進しているからこそ、その分野に精通している方の意見をもとに判断したりしています。特に、町民感覚的にどうかという判断が必要な場合には、やはり協議会の意見が大きいですね。また、目指すべき誘致後の町の姿や、それに向けたターゲット企業、解決が求められる地域課題等については、今も再確認・練り直しを常に続けています。

その協議会も徐々におもしろくなってきましたね。はじめは定例会でもあまり乗り気ではなかったかもしれませんが、今は協議会の皆さんから「この企業のこの技術おもしろいな!」などと徐々に言っていただけるようになってきましたね。

はい、面白くなってきました。今年に入って雰囲気が変わってきました。前のめりになってきたといいましょうか。「その企業にもっと協力してあげたらいいんじゃない?」など協議会の顧問さんから言ってもらえたりと、面白い状況になってきました。

サテライトオフィス誘致を通して面白い人と繋がることができるというのを、町民の皆さんが感じてくれると、誘致が加速しますね。

そうですね!だから今進出企業の5社の中で「真鶴テックラボ」に4社入ってくださっているんです。それはテックラボ自身が面白くなってきているってことで、ラボに企業が入居くださるとテックラボの収入にもなっていますし、町のためというより、テックラボとして必要なビジネスパートナーを見つけるというモチベーションに変わってきています。そこまでいけば、自律的に真鶴テックラボプロジェクトが動いていく状態、協議会メンバー自身のそれぞれのモチベーションでサテライトオフィス誘致が進んでいく状態になると思います。

「真鶴町の生活を豊かにする」スタンスをちゃんと維持し、それを実現しようとすると官民がしっかり結びついていかないといけない。そのスタンスでサテライトオフィス誘致をしようとすると、数値目標を追うのではなく、誘致の中身を重要視することになり、KPIも自然にその観点で決められるというように、真鶴町の一連の誘致活動がきれいに連動して回っているなと思います。

すごくうまく言いますね!その通りです(笑)

サテライト誘致専任ではないからこそのネットワーク力

卜部さんって講演された場で出会ったり、10年前から付き合いがある人が真鶴町で事業を展開されようとしたりと、ネットワークの作り方がすごいです。ぱっと見だとサテライトオフィスと関係ない方とも繋がったりされています。ビジネス上の友達や本当の友達が驚くほど多いですよね。

何がどうなるかわからないというのは、サテライトオフィス誘致の仕事だけじゃなく、あらゆる仕事に言えることです。10年間付き合っていなかったのにいきなり関係が復活するような案件が出てきたりということがよくあります。
自ら限定しないで、いろんな分野の方と付き合っていくと選択肢が増えていくと感じてます。

他の自治体の皆さんも同様ですが、地方の行政でサテライトオフィス誘致のみ専任で担当されている方は少なく、通常は複数の仕事を掛け持ちされています。移住だ、サテライトオフィス誘致だ、とは限定せずに、卜部さんのように間口を広げて、これからどんな案件になるのかはわからないという気持ちで、お付き合いを大切にされることが大事ですよね。

そうですね、官民連携において、民の力と、官つまり「行政」の力って役割分担があると思います。行政がやるべきことは全体をみること、長期的な視野を持つこと、あとは現場で一緒に汗をかくことだと思っています。行政だからこそこちらに情報が集まってきますし、民間の方々はご自分の専門的な分野で一生懸命動いてくださるという役割分担があるので、全体管理をする立場の行政自らが案件に対して限定的になってはいけないと思っています。

サテライトオフィス誘致も、真鶴町の様々な他の政策と連動しており、創業支援とも連動しています。通常のお店を作るという創業支援はもちろん、ユニークな創業支援も行っています。
例えば、リーンスタートアップと言うシリコンバレー発の創業プログラムを教えるプログラムもあります。そこにはIT系の企業の方々も真鶴に学びに来られます。実際にリーンスタートアップを体験できるスタートアップウィークエンドというプログラムに参加していた方が起点となりIoTの会社がサテライトオフィスを開設しました。

また、シェアリングエコノミーも稼働させて、主にIT系の企業から仕事を受注して自宅でPCを使って仕事ができるという「真鶴町での新しい働き方」事業も展開しています。サテライトオフィス開設企業が仕事を発注する受け皿づくりになります。これらの事業が全て連動してサテライトオフィス誘致に繋がってくるのです。

行政だからこそ複数の施策に関われますし、全体を見られます。一つの仕事だけをしていて熟してくのはなかなかないですよね。

この方法は、他の地域のご担当者にも言えると思うのですが、単一政策で無理に数字出して誘致を行うよりも現実的ですし、外部からあれこれ言われないですし、本当にためになる誘致ができるってことですね。
複数の業務の成果を出すためには、合理的ですよね。

そうです。一方で、手を広げれば広げるほど、手に負えなくなる事態にも直面します。だからこそ、一緒に取り組む連携パートナーを増やしていくことが重要なのです。今後は、サテライトオフィスを開設した会社の皆様自体も新たなパートナーになっていきます。

地域を一緒に耕すパートナー

私は真鶴町の「認定制度」が好きなんですが、特に撤退された企業でも町の連携パートナーになっています。めちゃくちゃ素敵ですね。

ですよね。課長の提案です。とても真鶴っぽいと思います。協議会の皆さんも賛成してくれました。たとえ真鶴町から出ていくことになっても友達で居続ければ何かの縁で応援してくれると思います。真鶴らしいと思います。
「関係人口」とおなじように、それら企業は「関係企業」と言えます。
サテライトオフィス誘致の次の段階として目指しているのが、サテライトオフィスを開設しなくても真鶴と積極的に繋がっていこうと思ってくれる企業をどんどん増やすことです(地方創生事業として採択された「地域課題解決型事業誘致」プロジェクト)。

11月13日の第13回マッチングイベントでも、食品ロス対策を事業にする会社と出会いました。
間引きして廃棄しているみかんをごみにせず、お金に換えることができるという提案がありました。そういう企業であればサテライトオフィスを真鶴町に設置しなくても東京にいながら、真鶴の農家を元気にしてくれるので、連携していきたいと思っています。
認定制度として、そういう関わり方の企業まで認定制度の範囲を広げてもいいんじゃないかとも思っています。

おもしろいですね!認定制度の該当範囲を広げるのもありですね。地域にサテライトオフィスを常設せずに地域のシェアオフィスやコワーキングスペースを活用して本社と地域を行き来して仕事する「循環型サテライトオフィス」で、認定制度に入っていただくのもアリかもですよね?

そうなんですが、今述べた企業は企業内の人的資源が少なく循環型サテライトオフィス開設も難しいとおっしゃっているのです。

そういう企業も含められるよう認定制度の対象範囲が広がれば、関係が深まった時点で真鶴町にサテライトオフィスで進出される可能性もありますよね。サテライトオフィス誘致の文脈だと、マッチングイベントで出会った100社のうち自分の地域に進出するのは1,2社かもしれませんが、認定制度の対象を拡大することができれば、仕事をする場所を問わないとなるので出会った100社すべて真鶴町に進出できる可能性がある企業となりますよね!

課題解決分野が合致するならばそうですが、合致する企業とは繋がっていきたいものですね。
またそこまでになると、「サテライトオフィス誘致プロジェクト」というよりも地方創生で採択された「地域課題解決型事業誘致プロジェクト」になってきますね。
真鶴町では「地域課題解決型のサテライトオフィス誘致」を謳い始める前に、町民主導での複数の地域課題解決を目指した事業が立ち上がっていました。町民主導のそれらの動きがあったからこそ、民間事業主体による動きが活発化され、サテライトオフィス誘致にもつながっていることが嬉しいですね。

サテライトオフィス誘致というと、外から町に入ってくるというイメージが強いですが、地域という土に企業という種を植えるイメージです。風土や地元の皆さんの想いやすでに取り組んできたことなどを混ぜ合わせて、地域の土をホカホカに耕しておかないと、せっかくいい種を植えても咲く前に根付かず、その種がはじかれてしまいます。

本当にそうですね、どんなにいい種を植えても、土が硬いままだと種は根付かないで、はじかれてしまうので、地域を耕す作業がとても大事になります。

地元の方がまだ外から来られる人をはじいてるって自治体さんのいらっしゃいますよね。

誘致以前もさまざまな地域活性化の取り組みを行っていました。例えば先ほど述べた「スタートアップウィークエンド真鶴」というプログラム。名前が横文字で、参加費7000円でした。開催3日分全ての食事代も含まれているので妥当な価格だったのですが、高齢者の方々は横文字の名前で高額なお金を徴収すると聞いて新興宗教かと思ったっておっしゃったりしていました(笑) 冗談みたいなホントの話です。そこで必要になってくるのが行政の側面支援。行政の信頼性を「後援」という形で付与し、公共性のある怪しいものではない取り組みであることを説明し、無事に開催できました。そういう過去の経験もあったので、聞いたことのない「サテライトオフィス」という横文字に対しても地域として免疫があったと思いますし、普段から町民との付き合いを広げ、「わからない」「不安」というお声に対して、その都度、丁寧に説明を重ねていくのみだと思います。日々「土を耕す」、です。

そして、行政として、もっともっと民間事業や住民の方々と模索しながら、一緒にできることを探していきたいと思っています。

 © 株式会社あわえ


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