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官民連携型地域課題解決モデル調査の報告

株式会社あわえは、中国経済産業局より地域内の行政や企業と地域外の企業と大学の連携による地域課題解決モデル調査事業を受託し、行政および企業向けの連携意向調査や先行事例から読み解く、横展開可能な連携パターンの洗い出しを行いました。
こちらでは、内容を一部抜粋しております。
調査報告書はこちらからダウンロード出来ます。

⑴ 自治体の地域外企業との連携による地域課題解決に関する動向・意向の調査と分析

実施期間:令和2年10月26日~令和2年11月16日
対象者 :中国地域の市町村107自治体
調査方法:WEB調査票入力によるアンケート調査

◆当該地域課題の分野について


中国地域の自治体が抱える地域課題について、アンケート調査を行った所、85%が「地域活性化・文化振興」という回答を行い、自治体を人口別に細分化すると「産業」、「雇用対策」、「文化コミュニティ対策」は、人口規模に関わらず多くの自治体が共通の課題として回答し、「中山間地域の振興」と答えたのは、5万人以下の自治体のみということが分かった。

◆貴自治体において当該地域課題を解決する際、一番始めに検討する連携先はどこですか?当てはまるものを1つ選択してください。


地域課題を解決する際、検討する連携先は「連絡先を問わず、広く検討を行う」とする自治体が多い一方、人口規模の大きい自治体は「地域内の企業・大学との連携」を検討する傾向が見えた。

-考察
人口規模に関わらず、多くの自治体は幅広い地域課題を抱えており、特に「産業」「雇用対策」「文化・コミュニティ対策」を地域課題として抱えている自治体の割合が多かった。
また、地域課題を解決する際に検討する連携先は、「連携先を問わず広く検討する」との回答が最も大きい割合を占めており、かつ、連携先の条件についても「地域課題を解決してくれるのであればどのような企業・大学でもよい」との回答が最も大きい割合を占めた。
これらのアンケート結果から、自治体は多様な地域課題を抱えており、それらを解決するため連携先について広く検討し、かつ、連携先の企業規模を問わない等、中国地域の自治体は地域課題解決のため地域外の企業等の連携に抵抗が少ないと言える。

⑵ 中国地域内外の企業に対する地域課題解決のためのシーズ及び地域との連携希望調査、分析

実施期間:令和2年10月27日~令和2年11月16日
調査対象 :東京都、大阪府、福岡県のいずれかに本拠を持った企業 21,211社
(主に情報通信業、サービス業などの業種を対象とした) ・中国地域に設立されている情報産業協会の会員企業
回答企業数:176社
調査方法 :WEB調査票入力によるアンケート調査

◆連携したい自治体を選ぶ際に重視していることは何ですか?

-考察
連携したい自治体を選ぶ際に重視することで最も多かったのは「自治体から地域課題に関する情報提供が積極的に行われていること」であり、次に「実証実験の提供など新たな取組に対する受け入れ態勢があること」「打ち合わせなどをオンラインで実施できる環境を整備していること」が続いた。「本社からのアクセス」や「取引先に近い」「金銭的なサポート」など立地や金銭的な優位点よりも、「地域課題に関する情報提供」「新たな取組への受け入れ態勢」「オンライン打ち合わせ可能」「担当職員の対応の早さ」などの地域課題解決に向けてのソフト面でのサポートを企業が望んでいることがわかる。

⑶ 地域内外プレイヤーの連携による地域課題解決モデルの事例調査

地域課題解決モデルの事例調査の中から、ヒアリング調査事例と文献調査事例の一部をご案内します。
その他の事例はこちらからご覧頂けます。

実施期間:2020年12月~2021年1月
調査方法:ヒアリング調査(10件) 文献調査(10件)
※企業へのヒアリング1件含む

ヒアリング対象

文献調査対象

◆ヒアリング対象事例
【事例概要】
展開地域   :福岡県八女市
人口     :5万人~10万人
事業名    :伝統的建造物群保存地区の活用とまちづくり
事業概要   :福島城の城下町を起源に商家町として栄えた八女市中心市街地・福島の伝統的建造物群の保存・継承を目的としてまちづくり市民団体が中心となって活動する事業
事業実施年度 :1995年~現在
担当部署   :定住対策課
活用した財源 :街なみ環境整備事業
        伝統的建造物群保存修理事業
課題の分野  :地域活性化・文化振興
連携先    :一般社団法人ノオト / 株式会社NOTE

【事業開始の経緯 / きっかけ】
1991年の大型台風によって被害を受けた伝統的建造物群の一部が取り壊され、通りに空き家が目立つようになったことに危機感を感じた住民が、まちづくり活動を展開させる市民団体「八女・本町筋を愛する会」を発足させたことをきっかけに、町並みを活かすまちづくり活動が市民主体で充実していった。また、行政では、1995年に企画調整室に特徴あるまちづくり班が設置され、1999年には商工観光課特徴あるまちづくり係へと発展し、街なみ環境整備事業及び伝統的建造物群保存修理事業などのまちづくり事業を推進していくこととなる。

【地域内プレイヤーの構築】
2001年に八女市文化的景観条例が制定され、2002年に八女福島の町並みが国の「重要伝統的建造物群保存地区」(以下「重伝建地区」という。)に選定された。また、2003年には空き町家の解消に向けて八女市職員がNPO法人「八女町家再生応援団」を発足させ、当時としては珍しく、公務員が市民としてNPO法人の活動推進に関わっている。

【地域内外プレイヤーの連携に至るまでの過程/今後の展望】
当時八女市の職員であり、八女町家再生応援団代表であった北島氏及び有志住民が積極的に地域外に出て先行事例を学んでいた際に、全国でまちづくり事業を手がける「一般社団法人ノオト」(※地域外)及び「株式会社NOTE」(※地域外)と出会った。その後まちづくり市民団体は持続可能なビジネス創出の観点より、歴史的な建築物の空き家を宿泊施設として再生活用し、滞在中に豊かな地域資源を活用した食事や体験等を楽しむ「農山漁村滞在型旅行」に挑戦することを決断し、同社からアドバイスを貰いつつ、「住まうように泊まる」をコンセプトに取組を進めている。

【事業成功の鍵 / 苦労した内容】
伝統的建造物群保存地区の活用とまちづくり事業推進において、北島氏は地域住民とともに、九州及び全国の重伝建地区の視察や、全国町並み保存連盟が主催する全国町並みゼミ等へ参加し、地域住民の町並み保存への理解を促すなど、地域住民に対して丁寧な説明を行っており、このような活動が町並みを大切にする市民意識を向上させたと言える。

【他地域へのアドバイス】
八女市職員を経てNPO法人の代表を務める北島氏からのアドバイスとして、志を共有する仲間を増やすこと。
また、市民と行政の協働のまちづくりの模索として、行政がまちづくりに参画し現場で住民と共に汗をかき、学び続けることがまちづくりには重要である。

【参考事例】
八女福島のまちづくりについて
第9回COREZO賞表彰式「公開COREZOまぢづくりフォーラム」より
動画はこちらからご覧ください(QRコードからもご覧頂けます)


◆文献調査対象事例
【事例概要】
展開地域   :神奈川県真鶴町
人口     :1万人未満
事業名    :官民連携を駆使したサテライトオフィス誘致
事業概要   :「真鶴町の生活を豊かにする」の実現に向けた町全体で関わる官民連携の取組
事業実施年度 :2017年~
活用した財源 :地方創生推進交付金
課題の分野  :地域活性化・文化振興
連携先    :株式会社ブックスタンド

【事業開始の経緯 / きっかけ】
真鶴町は2017年に神奈川県内で初めて過疎地域の指定(過疎地域自立促進特別措置法の対象地域)を受けた。
人口減少においても特に若年女性人口の減少が激しく、2010年から2040年の若年女性人口変化率の推計や、合計特殊出生率は国や県平均と比べても危機的な状況であると言えたため、真鶴町が抱える雇用や人口減少等の課題を共に解決してくれるパートナーを探すためサテライトオフィス誘致活動を行った。

【地域内外プレイヤーの連携に至るまでの過程】
2018年に町は「真鶴町サテライトオフィス誘致運営協議会」を設立した。この協議会の特徴は、同町の観光協会や商工会等の民間団体もメンバーとして参加し、連携して企業誘致を行っていることである。
その後同年に「株式会社ブックスタンド」(※地域外)を町内第1号のサテライトオフィスとして認定した。
同社はWeb集客サービスを提供するマーケティング会社であり、地域の主婦向けに「テレワークによるインターネット問い合わせ代行業務」の研修を行い、そこで育成した人材に対して業務を発注し、若年女性が家でスマートフォンを使い仕事ができる新しいカタチの雇用を生み出した。
また、その後現在に至るまで複数の企業・団体が進出した。
真鶴町のサテライトオフィス誘致に関して特徴的であるのは、「1年に1社誘致」という誘致数としては低い目標を設定していることである。
このように設定することで「とにかくたくさん企業誘致をする」ということではなく「地域コミュニティと共生できる」企業を、時間をかけて誘致することが可能となり、地域内での信頼性を担保しつつ、プロジェクトの品質を損なわない事業の推進が可能となった。

⑷ 地域内外プレイヤーの連携による地域課題解決モデルのパターン及びステップの整理

<地域内外プレイヤーの連携による地域課題解決モデルのパターン>


先行事例はパターンAとBの二つのパターンに分類された。
パターンAは地域内プレイヤーと地域外の企業等が、地域内プレイヤーの合意形成が整う前に連携したパターン(当初から連携)とし、パターンBは地域内プレイヤーの合意形成が整った後に連携したパターン(途中から 連携)としている。
結論から言うと、地域課題を解決したい自治体にとって再現可能性が高いパターンはBである。 まずは順を追ってパターンAについて考察する。

<パターンAのステップ>
パターンAとは、地域内プレイヤーと地域外の企業等が、地域内プレイヤーの合意形成が整う前に連携したパターンを指す(以下の図がパターンAの地域課題解決に対する取組の主な流れである)。

<パターンBのステップ>
パターンBとは、地域内プレイヤーと地域外の企業等が、地域内プレイヤーの合意形成が整った後に連携したパターンを指す(以下の図がパターンBの地域課題解決に対する取組の主な流れである)

⑸ 新型コロナによるパラダイムシフトを意識した地域内外プレイヤーの連携の在り方及び推進方 策のとりまとめ

ここでは、自治体のもつ地域課題が企業にとってどのような領域にあり、どのような企業が最も課題解決に適しているのか考察を行う。
まず、企業にとって事業展開を行う上で重要なことは「経済合理性」の有無であり、言葉を変えると企業活動は「利益が出る限り行うが、利益が出ない限り行わない」ということである。
そこで自治体のもつ地域課題について以下の図(出典:山口周『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』プレジデント社,2020年,pp.109ff. )を基に考察する。


これは社会に存在する問題を「普遍性」と「難易度」のマトリックスで整理したものである。
横軸の普遍性とは「その問題を抱えている人の量」を表し、「普遍性が高い問題」ということは「多くの人が悩んでいる問題」ということであり、「普遍性が低い問題」ということは「ごく一部(特定の地域)の人が悩んでいる問題」ということである。
一方で、縦軸の難易度とは「その問題を解くのに必要な資源の量」を表し、「難易度の高い問題」ということは「解決するのに人・モノ・金といった資源がたくさんいる」ということになる。
つまり、経済合理性が最も高い領域は普遍性が高く、難易度の低い「A」の領域ということになる。
企業活動は市場原理に従うと「A」の領域を中心に「経済合理性限界曲線」の内側で事業展開が行われ、近年「A」の領域を中心とした課題の希少化が問題となっているところである。
では、自治体の持つ地域課題に関する事業はどの領域になるのか。我々の調査から導き出した。
結論を述べると、現在多くの自治体が悩んでいる地域課題は問題の普遍性の低い「C~D」を中心とした、経済合理性限界曲線の外側付近の領域に存在していると考えられる。理由として、地域の課題はそれぞれ個別に自治体が抱えており、もし普遍性の高い問題であれば市場原理により企業による事業着手が行われているはずだからである。


さらに、問題の難易度の低い「D」の領域にある地域課題の解決にあたってはどのような企業が最も適しているのか考察を広げる。
結論として、IoT/AIなどの技術を活用するスタートアップ企業が最も適しているといえる。
まず、大企業においては問題を解決するにあたり必要な人・モノ・金という資源を多く有しており、課題解決が飽和状態となっている「A」の領域から、難易度は高いが市場規模を有する「B」の領域に進むことが考えられる。
加えて、 「D」の領域に関しては大企業にとって市場規模が小さいため費用対効果から着手しないことも想定される。
一方、スタートアップ企業においては保有資源が大企業より少ないものの、意思決定の柔軟性や、新たな市場を開拓し価値創造を展開する特徴から、「A」の領域は当然視野に入れつつ「D」の領域もターゲットとして進出することが考えられる。
また、スタートアップ企業にとっても、自治体のもつ地域課題に対して取組を行うことにメリットがある。
「D」の領域については、新たな市場を開拓できる可能性に加えて、自治体の持つ地域課題は、潜在的に別の自治体の地域課題と類似し、そのソリューションが点と点を結び問題の普遍性を高め、結果として「A」に近いニッチ市場の集合体の領域に移行する可能性がある。
IoT/AIなどの技術を活用する企業では技術の複製・伝達が容易で追加的費用(限界費用)が低いため、より「A」方向の領域に移行しやすく、ソリューションの対象を広げ、結果的にビジネス拡大に繋がる可能性があるといえる。
自治体はスタートアップ企業との連携に抵抗がないことはアンケート結果からも把握ができていることに加えて、自治体にとっても、スタートアップ企業の誘致の可能性があり、本社移転のハードルが大企業よりも低い点も望ましいものとなっており、双者にとってメリットが高いといえる。

最後に、自治体にとって地域外の企業等と連携し地域課題を解決するメリットについて考察をする。
現在我々がおかれている社会は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を筆頭に予測困難なことの連続であり、多くの自治体においても様々な長期計画が見直しに迫られたと考える。
このような不安定、不確実、複雑、曖昧な時代(VUCA時代)において対抗しうる対策を計画的に創造することはもはや不可能に近いが、本調査事業においてこれらの社会に対応する一つの方向性について記載すると、「地域内外問わず、多種多様な人材とこれまでの経済合理性の枠を超えたつながりを持っておく」ことだと考える。
本調査事業においても、偶然の人と人の結びつきが事業推進を加速させた事例が確認されており、関係人口の創出という観点からも人とのつながりは地域にとって貴重な資産といえる。もちろん、自治体が地域内のプレイヤーと連携し経済の域内循環を高めることは重要であるが、地域外の企業等と連携することで人を呼び込み、新たに外貨を稼ぐ方法を見出すことはVUCA時代における予測不能な「何か」があった時に、予想を超えて「誰か」が協力してくれるための門戸を広げ、新たな組合せであるイノベーションによる課題解決のためにも重要なことではないだろうか。

資料ダウンロード:令和2年度 地域内プレイヤーと地域外の企業による 地域課題共有型解決モデル調査事業 ~地域のあしたのために~

<本件の問い合わせ先>
地方創生推進部 ローカルインテグレーター 下川
Mail:koiki@awae.co.jp
Tel:03-3266-5910

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