株式会社Agriee様(以下、Agriee)は、衛星データを活用して作物の生育評価をするシステム「Growth Watcher」の開発と運営を事業としています。Agriee様が、どうして大分県竹田市へサテライトオフィスを進出したのか。進出の背景やきっかけ、そして事業の詳細について、代表取締役の鈴木様にお話を伺いました。
農業に携わるきっかけ
あわえ:はじめに、事業内容について教えてください。
鈴木 様:これまでは農業系のコンサルティング事業に取り組んでいました。現在は、衛星データを活用した作物の生育評価システム「GrowthWatcher」の開発と運営を軸に事業活動をしています。
あわえ:データ活用型の農業に着眼されたと思うのですが、農業との出会いは何だったのでしょうか?
鈴木 様:高校生の時に、環境問題に興味を持ったことがきっかけです。進路相談では、「環境問題について学びたいのであれば農学系の学科に進むといいよ」とアドバイスをもらいました。微生物にも興味があったので大学は生物工学科を選び、大学院からは農学部で研究を続けました。
あわえ:大学院ではどのような研究をされていたのですか?
鈴木 様:肥料のやり方や、圃場の管理の仕方です。土の中の微生物の構成がどのように変化するのかという研究をしていました。よく耳にする「土づくり」とは、いわゆる土の中の微生物を管理できるようになれば、良い作物が育つということも学びました。
あわえ:研究員をしながら会社員としても働いていたとか。
鈴木 様:研究と生産の場をつなぐことが重要だと考えていたので、同時並行にしました。大学院で研究をしつつ、農業の生産者さんのお話を伺っていると、私たちの研究成果が農業の現場に還元されていないことを実感しました。そこで、私たちの研究成果を現場にスムーズに持って行くことができれば、生産現場がもっと効率よく回るようになり、生産現場での困り事を研究者が解決するというループをうまくつくることができるはず。研究現場と生産現場の距離をもっと近づける必要があると思いました。
あわえ:生産の現場と実践的な研究を両立されていたのですね。会社員としては、どのような仕事をされていたのですか?
鈴木 様:食ビジネスに特化したコンサルティングをしていました。農業も産業なので、作る側だけでなく使う側の視点に立ってみたいと思い、外食産業のメニュー開発や商社・中食企業さんに対しての商品開発の提案などをしていました。
あわえ:そこでの経験も研究にも活かしたい、という思いがあったのでしょうか?
鈴木 様:研究と紐づかせるというよりは、「研究の現場」「生産現場」「食の現場」という食マーケットっていうのを勉強したかったのです。農家さんの生産物を「使う側」はどういう視点で生産物を評価するのかを知っていれば、農家さんにそのポイントを押さえた生産を提案することでwin-winの関係がつくれると考えたんです。
研究・生産・食そして、フィールドは宇宙へ
あわえ:今までのご経験から、農業や環境の研究、食ビジネスでのコンサルティング経験がAgrieeさんの原点なのですね。現在提供している「GrowthWatcher」のサービスに欠かせない、衛星データの活用は何がきっかけだったのでしょうか?
鈴木 様:食ビジネスのコンサルの経験から、生育状況を知りたいというニーズは、農業に携わる方であれば必ずあると確証していました。現在、農業の中で圃場まわりのデータとしていろいろな情報を集められますが、その情報がイマイチ生かしきれてないなと思っていました。その情報をしっかりとデータとして活用することができれば、より効率の良い農業にもつながるし、生産性も向上させることができるはずだと考えました。データが現場で活用できていない原因は、結果が追えていないからでした。そこで、自分には何が出来るのかと考えた時にたどり着いたのが人工衛星です。
あわえ:そこで衛星データの活用という発想に至ったのが凄いなと思います。
鈴木 様:生産現場にどのような技術を応用すれば、より効率を上げることができるかは、常に考えていました。農業とは一見関係ない分野のテクノロジーを使ってみようとか。農業では圃場周りのデータが、さまざまなテクノロジーによってモニタリングが可能になっているのですが、データが活用できていない。もっと作物の変化状況や、環境が違う作物の比較など、データを活用すれば、生産性を高めるヒントが得られると思い、衛星データに至りました。
あわえ:ここで生産現場以外の知見が活かされているんですね!
鈴木 様:はい、研究・生産・食ビジネス、さまざまな視点から農業を見ていた経験が役に立ったと思います。
手探り感満載の創業期、地域一体で事業展開できるマッチングイベント
あわえ:創業経緯について教えていただけますでしょうか?
鈴木 様:人工衛星の活用に着想したのは2017年で、最初は、知り合いの農家さんで実証実験を行っていました。その後プロトタイプが完成した頃に偶然Peatixであわえさんのイベントを見つけて。おもしろそうだなと思い、参加させていただきました。
あわえ:当社のマッチングイベントはいかがでしたか?
鈴木 様:自治体さんのプレゼンが聞いていてすごく楽しかったですね。それぞれ自治体さんの個性が出ていて、すごく熱量も感じられたし、おもしろいなと思いました。
あわえ:マッチングイベント参加前と比べ、何か変わったことってありましたか?
鈴木 様:出会う前までは、知り合い経由で農家さんに声をかけていくなど、手探り感で営業活動をしていたので、これからどこの誰にアクセスしていけばいいのかと悩んでいました。あわえさんのマッチングイベントを知って、農業って地場に根差した産業なのだから、自治体さんにアクセスしていく方がいいのでは、とヒントをもらいました。そこからは、マッチングイベントで自治体さんと出会えたことで、自社といち農家さんという点でのつながりではなく、自社とその地域という一帯のつながりができ、実証実験が出来るようにまでなりました。
スピード感と柔軟性が決め手
あわえ:サテライトオフィスの進出をした竹田市とはマッチングイベントが出会いですか?
鈴木 様:はい。1、2回オンラインでミーティングして、視察にとりあえず伺おうという段階でしたが、竹田市は関連部署や生産者さんなど関係各所を調整していただきました。視察の対応だけではなく、竹田市の皆様の人・土地柄がすごく良い印象として残っています。
あわえ:ズバリ、竹田市への進出の決め手は何でしたか?
鈴木 様:スピード感ですかね。こんな事がしたいというお話をさせていただくと、すぐに周りに声をかけてくださって。相談後のオンラインミーティングの時には必ず関係者も同席するよう調整してくださいました。対応がスピーディーだったというのは、すごく大きいです。また、大分県が宇宙産業に力を入れているということも大きな決め手でした。
あわえ:竹田市に進出し、今はどんな取り組みをされているのですか?
鈴木 様:農家さんだけではなく、JA、振興局と連携して生育データの収集をしています。現在は、生育データの収集だけですが、これからはそのデータを活用していく予定です。農家さんの高齢化が問題になっていて、そこを何とかするためには、若手や新規就農者に参入してもらうことが必要です。「GrowthWatcher」を活用し、生産現場の効率化を進め、収集した生育データをもとに新規参入者が挫折しにくい農業体制をつくることで、若手や未経験の方が農業に参入しやすくなり、竹田市の農業が産業として持続的に続いていくお手伝いができたらなと思っています。
あわえ:ありがとうございます。竹田市のその次は他の地域での展開も考えていますか?
鈴木 様:竹田市を中心に事業展開していきますが、農業の課題は日本全体の課題ですので地域にも展開していきたいと考えています。
サテライトオフィス進出検討企業へのメッセージ
あわえ:これから地方で事業をしたい、いつか進出したいと思っている企業さんに向けてアドバイスはありますか?
鈴木 様:深く考えすぎずに飛び込んでみるというのもOKかなと思います。やっぱりいろいろ考えてしまうと動けなくなってしまうということもあるかなと思うので。フィーリングで行く。ここと思ったら行く!というのも、ひとつの手かなと思います。
あわえ:なるほど。
鈴木 様:逃したチャンスは戻ってこないですからね。
お忙しい中、インタビューにご協力頂きありがとうございました。大分県竹田市での実証実験の結果、楽しみにしております!
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